論文の要旨


このページでは、論文・著書等の要旨を掲載します。

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T著書

『女と法とジェンダー』(第2章 女性と家族法 執筆)
女性が婚姻に際して直面する法的な問題の中から、婚姻適齢、再婚禁止期間、夫婦の氏を取り上げ、それぞれについて、問題の所在、判例・学説の動向、諸外国の立法状況を整理し、このように解決されるべきかを検討する。さらに、現在進められている民法改正における議論状況を整理するとともに検討を行った。そして、税制度、社会保障制度などの運用状況も踏まえながら、家族に関する法のあり方について考察を行う。

『不法行為法の現代的課題と展開』(「公害と被害者救済制度」執筆)
公害における被害者救済のしくみが国及び地方自治体のレベルでどのように設置されてきたのか、その経緯を追っていくとともに、公害における被害者救済制度の中心である公害健康被害補償制度について、その内容、運用実態、問題点を押さえた上で昭和62年の改正を検討する。さらに、平成5年に制定された環境基本法のもとで被害者救済がどうあるべきかを検討する。

『社会科学と人間』(第6章 消費者被害と法的救済 執筆)
消費者被害のうち悪徳商法と製造物責任を取り上げる。まず、被害の現状を概観し、その解決のための法のしくみを押さえ、その上で現在の法制度の問題点を指摘する。そして、今後、これらの問題に対して、どのように取り組んでいくべきかを考察する。


 

U論文

「消費者問題における情報と法」(研究ノート)
1996年12月6日に公表された国民生活審議会消費者政策部会報告「消費者取引の適正化に向けて」を踏まえ、消費者被害の救済・防止のために必要な情報提供のあり方を法律との関連の中で検討する。本稿は、まず消費者被害の救済や防止に必要な法律に関する情報が何かを検討した上で、情報提供の現状とその問題点を指摘する。そして、日常生活に必要な法律に関する知識をどのようにして消費者に根づかせていくのかを考察する。

「アメリカ合衆国における損害賠償債権の相殺」
自動車事故によって双方に生じた損害賠償債権相互間の相殺の可否について、アメリカにおける判例・学説の議論状況を整理するとともに、この問題に関する州法、統一比較過失法の立場を紹介する。そして、アメリカでは、問題を解決するにあたり、いかにして被害者の損害を実質的に填補し、公平な解決を図るかが考慮されていることを指摘し、このような視点を日本での議論にも取り入れるべきであると主張する。

損害賠償債権の相殺と民法509条(4完)」
比較法的検討、判例・学説の検討を通して、民法509条の機能、そして同条の解釈のあり方を考察する。そして、不法行為の誘発防止と被害者への損害の填補という同条の機能を重視した基本的な解釈枠組を提示し、さらに利益衡量を行う際に考慮すべきファクターを具体的に示し、最後に不法行為、債務不履行の両者を含む意味での損害賠償債権の相殺可否という視点から同条についての筆者の解釈論を提示する。

「損害賠償債権の相殺と民法509条(3)」
民法509条の解釈問題のうち不法行為債権相互間の相殺の可否、債務不履行債権の相殺の可否の2点を取り上げ、判例・学説の議論状況を整理し、検討を加える。前者の問題については民法509条の趣旨が何かを明らかにしながら、判例・学説の理論を検討し、この問題を考える際にどのようなファクターを利益衡量に際して重視すべきかを明らかにする。後者の問題については、判例・学説を整理し、検討を加えた。

「損害賠償債権の相殺と民法509条(2)」
故意の不法行為についてのみ相殺を禁止するドイツ民法393条の立法目的を探り、その根底には自力救済的な不法行為を認めるべきでないという理念が存在することを指摘する。そして、同条をめぐるドイツでの解釈問題を紹介し、日本での議論にいかなる示唆を与えるのかを考察する。ついで、ドイツ民法を継受した現行日本民法509条を検討し、その立法目的が不法行為の防止という点にあったことを明らかにする。

「損害賠償債権の相殺と民法509条(1)」
不当に奪取された物の返還請求について相殺を禁止するフランス民法の規定を考察対象とし、この規定が自力救済的不法行為を防止する趣旨であることを明らかにする。さらに、この規定とは別に論じられている損害賠償債権の相殺について、フランスでは肯定的な立場がとられていることを指摘する。次に、フランス民法を継受した旧民法を検討し、自力救済的な不法行為を防止する趣旨が立法者にあったことを指摘する。

「不法行為債権の相殺に関する一考察〜民法509条の解釈論を中心として」
民法509条の立法的沿革、立法理由を探り、同条の意義を考察する。そして、不法行為債権を自働債権とする相殺の可否、不法行為債権相互間の相殺の可否、不法行為債権に対する転付命令の可否、債務不履行債権の相殺の可否、相殺契約の可否という同条をめぐる解釈問題ごとに、判例・学説の立場を整理し、その変遷を明らかにする。さらに、509条の機能を検討した上で、同条の解釈のあり方を考察する。

 

V判例研究・解説

『消費者取引判例百選』(森島昭夫・伊藤進編)、有斐閣、1995年
「天引き利息と貸金業法43条、17条1項6号の返済期間」
東京地裁平成2年12月10日判決を通して、貸金業法43条が天引利息に適用されるか否か、利息先払いが期限の猶予又は再貸の条件になっている場合への同法43条の適用可否、同法17条1項6号にいう返済期間の記載のあり方について検討する。

『医事紛争解決の手引』(宮沢俊夫編著)、新日本法規出版、1995年
・「未熟児網膜症と医師の過失の有無について」
最高裁昭和54年11月13日判決を通して、未熟児網膜症訴訟における医師の過失を酸素補給管理上の過失と定期的眼底検査を怠った過失に分けて解説・検討する。

・「未熟児網膜症の医療水準について」
最高裁昭和60年3月26日判決を通して、未熟児網膜症訴訟における医師の過失を判断するにあたって問題となる医療水準の程度について解説・検討する。

・「光凝固法が一般的でなかった等のため未熟児網膜症により失明」
最高裁昭和57年3月30日判決を通して、さらにその後の未熟児網膜症訴訟に関する裁判例を踏まえながら、どのような場合に医師の過失が認められるのかを分析・検討する。

「Pham v. Welter 542 So.2d 884(Miss.1989)−当事者の双方が損害賠償を請求する交通事故の事案において、ミシシッピ州法を適用して両者の損害額の差額について判決を下すべきであるとの主張が退けられた事例」
当事者双方が損害賠償を請求する交通事故の事案において、ミシシッピ州法を適用して両者の損害額の差額について判決を下すべきであるとの主張が退けられたアメリカの判決を紹介し、この問題についてのアメリカでの判例、学説の議論状況及び法律の立場を解説・検討する。

 

Wその他(報告書など)

公害健康被害補償制度」
公害被害者に対する救済方法の一つである公害健康被害補償制度について考察を加える。まず、公害健康被害補償制度の成立過程及び制度の概要を押さえ、その運用状況、問題点を検討する。そして、昭和62年の第一種地域の全面解除を内容とする法改正の背景及び改正内容を整理し、公害対策の主眼が個別補償から一般的予防へと変化していることを指摘し、今後は公害の予防面が注目されるべきであることを主張する。

医薬品副作用被害救済・抑止のための制度としての医薬品副作用被害救済・研究振興基金」
医薬品副作用被害に対する救済手段としての医薬品副作用被害救済・研究振興基金について検討する。まず、基金の概要を紹介するとともに運用状況を示し、基金の運用上の問題点を指摘する。次に、基金の機能を検討し、基金の機能上の問題点を指摘する。さらに、医薬品副作用被害の救済にあたっては、被害者の事後救済とともに事前抑止の点が重視されねばならないことを主張する。