U論文
「消費者問題における情報と法」(研究ノート)
1996年12月6日に公表された国民生活審議会消費者政策部会報告「消費者取引の適正化に向けて」を踏まえ、消費者被害の救済・防止のために必要な情報提供のあり方を法律との関連の中で検討する。本稿は、まず消費者被害の救済や防止に必要な法律に関する情報が何かを検討した上で、情報提供の現状とその問題点を指摘する。そして、日常生活に必要な法律に関する知識をどのようにして消費者に根づかせていくのかを考察する。
「アメリカ合衆国における損害賠償債権の相殺」
自動車事故によって双方に生じた損害賠償債権相互間の相殺の可否について、アメリカにおける判例・学説の議論状況を整理するとともに、この問題に関する州法、統一比較過失法の立場を紹介する。そして、アメリカでは、問題を解決するにあたり、いかにして被害者の損害を実質的に填補し、公平な解決を図るかが考慮されていることを指摘し、このような視点を日本での議論にも取り入れるべきであると主張する。
損害賠償債権の相殺と民法509条(4完)」
比較法的検討、判例・学説の検討を通して、民法509条の機能、そして同条の解釈のあり方を考察する。そして、不法行為の誘発防止と被害者への損害の填補という同条の機能を重視した基本的な解釈枠組を提示し、さらに利益衡量を行う際に考慮すべきファクターを具体的に示し、最後に不法行為、債務不履行の両者を含む意味での損害賠償債権の相殺可否という視点から同条についての筆者の解釈論を提示する。
「損害賠償債権の相殺と民法509条(3)」
民法509条の解釈問題のうち不法行為債権相互間の相殺の可否、債務不履行債権の相殺の可否の2点を取り上げ、判例・学説の議論状況を整理し、検討を加える。前者の問題については民法509条の趣旨が何かを明らかにしながら、判例・学説の理論を検討し、この問題を考える際にどのようなファクターを利益衡量に際して重視すべきかを明らかにする。後者の問題については、判例・学説を整理し、検討を加えた。
「損害賠償債権の相殺と民法509条(2)」
故意の不法行為についてのみ相殺を禁止するドイツ民法393条の立法目的を探り、その根底には自力救済的な不法行為を認めるべきでないという理念が存在することを指摘する。そして、同条をめぐるドイツでの解釈問題を紹介し、日本での議論にいかなる示唆を与えるのかを考察する。ついで、ドイツ民法を継受した現行日本民法509条を検討し、その立法目的が不法行為の防止という点にあったことを明らかにする。
「損害賠償債権の相殺と民法509条(1)」
不当に奪取された物の返還請求について相殺を禁止するフランス民法の規定を考察対象とし、この規定が自力救済的不法行為を防止する趣旨であることを明らかにする。さらに、この規定とは別に論じられている損害賠償債権の相殺について、フランスでは肯定的な立場がとられていることを指摘する。次に、フランス民法を継受した旧民法を検討し、自力救済的な不法行為を防止する趣旨が立法者にあったことを指摘する。
「不法行為債権の相殺に関する一考察〜民法509条の解釈論を中心として」
民法509条の立法的沿革、立法理由を探り、同条の意義を考察する。そして、不法行為債権を自働債権とする相殺の可否、不法行為債権相互間の相殺の可否、不法行為債権に対する転付命令の可否、債務不履行債権の相殺の可否、相殺契約の可否という同条をめぐる解釈問題ごとに、判例・学説の立場を整理し、その変遷を明らかにする。さらに、509条の機能を検討した上で、同条の解釈のあり方を考察する。
|